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ALSひるまず力まず18 ~優しい社会へ国政で暴れて~

ALSひるまず力まず18 ~優しい社会へ国政で暴れて~

国民の代表が人工呼吸器と介助者を必要とするー。大いに結構ではないか。

Hirumazu18
参院選で当選を決めた「れいわ新選組」の船後氏。
右は山本太郎代表(21日)

参院選で当選を決めた「れいわ新選組」の船後氏。右は山本太郎代表(21日)

 21日の参院選では、「れいわ新選組」の船後靖彦氏(61)が当選した。船後氏は筋萎縮性側索硬化症ALS)の患者である。今後、注目を浴びることで、ALSの治療法の開発が進むだろう。 治療や介護の環境整備も前進するはずだ。

 船後氏とは以前よりフェイスブック (FB) を通じて友人だ。メールでも何度かやりとりをしたことがある。20年前にALSを発症した船後氏は、2002年には人工呼吸器と胃ろうを装着している。 体の状態はほぼ私と同じだ。14年には千葉県の松戸市議選に立候補し、落選している。

 今回の参院選では、脳性まひの患者、木村英子氏(54)も当選した。国会側は議場への大型車いすの乗り入れ、介助者を同伴しての登壇などができるよう対策を急いでいるという。

 実は、衆議院では3年前、信じられない出来事があった。ALS患者を、厚生労働委員会に参考人として呼んでおきながら「コミュニケーションに問題あり」として意見陳述を拒んだのだ。それを思えば隔世の感を禁じ得ない。

 国民の注目は「人工呼吸器を装着した船後氏にまっとうな議員活動ができるのか」だと思う。テレビ報道を見る限り、あらかじめパソコンでつづった原稿を代読してもらっているようだ。受け答えは、透明の文字盤を目で追うのを介助者が読み取り、介助者が声を発して行うという。

他人を介しての言葉では、人の心は動きにくいのも事実だろう。船後氏には誰もが納得する発言方法を実現してもらいたい。国政で本会議場に立つからには「障害があるからできません」というお涙頂戴では駄目だ。船後氏には「そんな心配は杞憂でした」と、言わせるだけのバイタリティーがあると信じている。

 難病患者が暮らしやすい社会の実現はいまだ道半ばだ。しかし、実現すれば、高齢者やベビーカーに乗る乳幼児にとっても優しい社会にきっとなるはずだ。高齢化や少子化への対策にもつながる。

 船後氏たちには、政治思想の垣根を越えて、難病患者の社会進出の一助となる政策の実現のために暴れ回ってほしい。

<中国新聞 2019年(令和元年)7月31日(水曜日)掲載>