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ALSひるまず力まず16 ~マツスタで快適 カープ観戦~

ALSひるまず力まず16 ~マツスタで快適 カープ観戦~

小学2年生のとき初優勝した広島東洋カープとともに成長した私。もちろん生まれながらのカープファンだ。個人でも年間10試合ほど観戦に出掛けては、応援に声をからす。おっと!声は出んのだった(笑)。 

旧広島市民球場とは大違いで、マツダスタジアムは車いす使用者も安心して観戦できる広島県民の誇るべきバリアフリースタジアムだ。そんな場を日本ALS協会広島県支部の会員の交流に使わない手はない。 

車いす席はコンコース沿いなどにズラリと約140席を確保する。屋外球場のセ・リーグの本拠地と比較すると、2010年に近代化改修工事を終えた甲子園球場は31席、神宮球場は17席、横浜スタジアムは11席。マツダスタジアムは座席数で大きく他球場を引き離しており、介助者とともにゆっくり観戦できる。 

特筆すべきは他の球場と異なり、車いす席のほとんどが雨にぬれない位置にある点だ。突然の降雨に、さっと雨宿りに動けない車いすの使用者にはうれしい。各所に親切なホスピタリティスタッフを配した上に、必要とあらば人工呼吸器や吸引器用に電源まで貸してくれる。車いすでも快適に使えるトイレの数も多い。

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カープ観戦したマツダスタジアムで写真に納まる
日本ALS協会広島県支部のメンバー(2018年5月)

ALS患者の多くは外出が思うに任せず、支部月例会はいつも低調な参加率だった。さて、三保支部長の新しい試みとして企画したカープ観戦はいかに…。 

最初は「野球なんてテレビで見ればいいのに…」と敬遠していた患者もいた。でも、いざ参加してみると球場の空気に表情も緩みっぱなしだった。人工呼吸器を装着した車いすのALS患者がずらりと並んだ姿は圧巻だった。 

ただ、問題がある。他のカープファン同様、カープの成績が上がるのに合わせて、チケット入手も困難を極めるのだ。観戦企画の持続開催が危ぶまれる。会員はゆっくりと観戦できるパーティールームを希望しているが、3年目を迎えた今年もいまだ実現できないでいる。本連載を読んだカープ球団からお声が掛かるはずだろう(笑)。 

自宅にこもっていた患者も重い腰を上げるなど、カープには薬をも上回る不思議な力がある。当分カープファンはやめられそうにない。やめるつもりもないが。 

<中国新聞 2019年(令和元年)7月3日(水曜日)掲載>